意識の声 No.10 より

1991年 5月号

 

 一ヶ月の経過は実に早いもので、ついこのあいだ四月号を書いたと思ったら、もう五月の文章を作成することになりました。大体私はあらゆるGAP関係の行事や諸活動を一年単位で計画しますから、それらを次々と処理していくうちに月日はアッというまに過ぎてしまい、頼山陽ではありませんが「逝くものはすでに水のごとし」といった状態です。頼はわずか一三歳で(実際は一二歳)この詩を作って自己の浅学を恥じているのですが、私などはあと三年で七〇歳になろうというのに、一三歳の頃の精神の状態からほとんど進歩していないのですから、何という愚昧な人間なのだろうと天を仰いで長大息するかといいますと、ナーニ、そんな感傷的な気分は起こりません。私は信念を持って生きるだけだ、と割り切っています。

 

 しかし、年齢相応の悟りというか見識は必要なので、それなりの努力する必要はありますね。四月に入ってから新アダムスキー全集第一〇巻の原稿五〇〇枚を書く仕事にとりかかったのですが、ワープロがあればわけなしに書けるとたかをくくっていたものの、いざ始めてみると、どっこい、楽な仕事ではありません。しかもワープロにかじりついて目が悪くなってきたものですから、この際、原稿は手書きに切り替えようかと考えているところです。CRT(ブラウン管)付きのワープロやコンピュータはエックス線を放射するので、これをもろに浴びると確実に目をやられて白内障になったりするということです。私の使用する機械の液晶バックライトはまだ安全なようですが、それでも目を悪くするのですから、文明の利器も要注意です。私の見るところワープロで「これは凄い!」と言える機械はまだないようですね。まあ、いかなる状態になろうと、へこたれないのが私の取り柄ですから、「やったるで!」とばかりに、ただ前進あるのみです。腹の底から楽天主義が身についていると言えるでしょう。

 

 アダムスキーといえば、最近アメリカの古くからの文通仲間であるウィリアム・シャーウッド氏から来た書簡によりますと、近来アメリカではアダムスキーを認める人が増えてきたということです。それはそうでしょう。かねてから私が力説していたように、アダムスキーは次第に世界的に認められるようになってくるのです。来世紀には地球人が有人大宇宙船を駆って別な惑星の文明を発見し、アダムスキーの体験の正しかったことが立証されるようになるのです。私はそのことが分かりすぎるほど分かっているものですから、それで平然としてGAP活動を続けているわけです。

 

 地球人が太陽系の別な惑星群に偉大な文明が存在することを発見して腰を抜かす時代は必ず来るのですが、それを実現させるものは実は科学なのであって、哲学が実現させるのではありません。しかし科学が暴走しないように歯止めをかけるのは哲学、すなわち形而上的な思惟です。むしろ哲学は他の惑星群の大文明を発見してから、それに啓発されるかもしれません。したがって、まず科学が先行し、それに従って宇宙的な哲学が勃興するという順序になるでしょう。

 

 科学の進歩だけでは人間の精神の発達はしません。私の見るところ、湾岸戦争でのイラク軍の残虐さは、四六年前に終結した第二次世界大戦時の各国の残虐さと変わりませんね。結局、宗教はむなしく、哲学も無益に終わり、残ったのは科学の長足の進歩です。この科学を応用して地球人が別な惑星群の偉大な人々の宇宙的な思想と生き方にふれることができれば、科学は地球人類に起死回生の生き方を教えるための架け橋の役目をすることになります。科学の役割はそこにあるのです。

 

 しかし私達GAP会員が現実の生活を楽しく快適に過ごすためには、別な惑星へ宇宙船で行って大文明を見聞する必要はありません。私達はすでにアダムスキーの体験記によって、それを知っているからです。ただもうアダムスキーの伝えた宇宙的哲学の実践に励みさえすればよいでしょう。

 

 前記のように私は新アダムスキー全集第一〇巻の原稿を書くにあたり、あらためてアダムスキー氏の文献を片っ端から読みましたが、特にア氏がアリス・ポマロイ女史に語った言葉が印象に残っています。それは次のとおりです

 

(1) 他人を助けるような生き方をすること。
(2) 万物と万人を祝福すること。
(3) 自分が大宇宙そのものだと自覚すること。

 

 いずれも言葉で表現するのは容易ですが、実践はなかなか困難です。しかし自分自身の宇宙的な宿命を形成するには、特に来世で良き惑星に転生をしようと思えば、これらを実践することが必要でしょうね。こんな事柄を全く無視して気ままな生活で明け暮れして、エゴむき出しで生きたところで、良き惑星への転生はおろか、地球で転生をくり返すだけで、しかもロクな場所へは行けないでしょう。こうした来世のことまでも考える力が全くないのが現代の地球人です。つまり地球のレベルを学習しきれず、卒業していないために、果てしもなく同じレベルで転生をくり返しているにすぎません。換言すれば、留年をくり返しているわけです。

 

 もう一つ私が感銘を受けたのは『第2惑星からの地球訪問者』の中で、火星人ファーコンがアダムスキーに言っている次の言葉です。

 

「私たちはあなたがたの言う失望なるものを知りません。それは消極的な言葉です。ずっと昔、私たちは信念の力、希望の力、絶対にあきらめない力などを学びました。昨日失われたゴールは明日勝ち取ることができます」

 

 上の部分はGAP内部の熱意ある人々のあいだで有名になっていますが、読み返すたびに絶大な勇気と信念と希望がわき起こってきます。特に「絶対にあきらめない力」というのは地球の過去の偉人達も言及しているのです。この頃私は理由あってジョン万次郎を研究しています。一五〇年昔、漂流して鳥島にいたところをアメリカの捕鯨船に救助され、ホイットフィールド船長に可愛がられてアメリカで教育を受けた後、帰国して幕府に仕え、アメリカの文明を導入して、坂本竜馬、勝海舟、福沢諭吉などの英傑に多大な影響を与えた偉人、万次郎も「絶対にあきらめないことだ」と語っています。

 

 しかし計画した物事を簡単にあきらめてしまう地球人のなんと多いことか! GAP会員のなかにも、最初は熱狂的に活動を支持しながら、やがてあきらめて去ってしまう人が少なからずいます。どうやら地球人を「あきらめの動物」と呼ぶのが当たっているかもしれません。本人の自由だから、ほっとけばよい、誰もが自分の好きなようにやれば良いという人もあるでしょうが、それは次元の違う話です。百万人が自分に反対しようが自分は絶対にあきらめないぞ、という強烈な信念の力を持つことをアダムスキーが――というよりもファーコン氏が――教えてくれたのです。これを応用して素晴らしい大邸宅の建設に成功しかけている会員の人もいるのですから、良いことは実践しなければソンというものです。

 

 二二年前、笈を背負って勇躍東京へ進出してきた私の生活は、ときとして沈没しそうな漂流の連続でしたが、持ち前の楽天主義と「絶対にあきらめない力」とによって怒濤を乗り越えてきましたね。スペースピープルのご援助のおかげでもありますが、(奇跡的なご援助がたくさんありました)、それも私が信念の力を失わなかったからご援助が続いたと思うのです。「天はみずから助くる者を助く」とはこのことです。

 

 GAPはダメだといって非難する人がありますが、その人は自分自身の脆弱な信念を非難するべきです。「信念を持って前進する者は、行く手をさえぎって噛みついてくる犬などを相手にしているひまはない」というリンカンの言葉を思い出します。

 

 皆さんも頑張ってください。アダムスキーの書物類の中には数千万円のお金を出しても買えないほどの貴重な多くの宝石が煌めいています。これを見逃さないように!