投稿者 松本 日時 2001 年 4 月 04 日 23:27:01:
回答先: Re: ねずみの時間はらむじの時間 投稿者 スターダスト 日時 2001 年 4 月 01 日 21:28:29:
|> だいたい、純粋な子供のころのほうが
|> 時間の流れがゆっくりでしたが
|> これって
|> やっぱり、印象を良く検知していた
|> 証拠なんでしょうかねー。
|> ま、謎は謎なんですが
|> 松本さん[HELP]
∇年をとると1年があっという間に過ぎてしまう。
子どもの頃は、1年はもっと長かったような気が
する。と、50歳ぐらいの人が言うのをよく聞き
ますが、確かに昔を思い出すとそう感じてしまう
のかもしれません。時間の流れがゆっくり感じら
れる場合と、速く感じる場合があるのはだれもが
経験していることです。少し矛盾も感じますが、
1.時間がたつのが遅く感じられる場合
・つまらない内容の講義を聴いている時や、
何もすることもなく退屈している場合。
(特に、マンネリ化した人生を過ごしている
場合はあまり記憶にも残らないため、後で
振り返ると、1年がいつのまにか過ぎて
しまい、逆に短く感じられる)
2.時間がたつのが速く感じられる場合
・興味をもって、何かに熱中している場合
(特に、多くの新しくおもしろい考えや知識
に接すると、新鮮な驚きに満ちた時を過ごせ
て、色々な記憶が残り、後で振り返ると、1
年が変化に富んでいて、逆に長く感じられる)
といった経験は誰しもあると思われます。
一瞬の時間が10倍〜100倍も長く感じる
ことは、また異なる理由がありそうですね。
球技をやっていてボールが止まって見える
など、よく聞いたりしますが、下記の本のよう
に、80分の1秒より短い時間を感じること
があるのかどうかということも判断基準になり
そうですね。
どちらにしても最後の”意識”の部分は
謎なのですが。
「脳の時計、ゲノムの時計,
ロバート・ポラック,2000年」より
・リベットの患者にとって、そして私たちみんな
にとって、いつが「いま」なのだろうか?私たち
の誰もが自分の前腕部をつねったその瞬間と、
それを感じた瞬間の間に半秒が経過したことなど、
感じることはできない。自分の前腕部をくすぐっ
てみてほしい。あなたがそれを感じるまで、時間
の経過などありはしないだろう。それでも人の脳
が感覚を意識の瞬間へまとめるには、半秒かかる
のである。つまり私たちは、半秒進んでいる意識
の内部時計にコントロールされているのだ。この
時計があるので、私たちは、いま経験していると
思い込んでいることはすべて半秒ほど前に起こっ
ているにもかかわらず、同時感覚を持つことが
できるのである。
・いま、この瞬間という感覚、目覚めていると
いう感覚、そして自覚しているという感覚を持つ
には、脳がより深い方法で現在と1秒前の過去を
つながなければならない。失われた半秒の間に、
脳はすべての感覚器官から皮質に送られる情報と、
その過去のバージョン、つまり以前経験した感情
を含む経験の記憶の蓄積を混ぜ合わせる。その時
はじめて、外界と心のなかをスムーズに動きなが
ら認識した意識が現れる。脳は、さまざまな特性
を持つ意識を維持していく神経細胞のネットワ
ークをたくさん持っている。それらのネットワ
ークは、化学物質や電気でたがいにリンクし合
っている。意識が存在するためには、これらの
ネットワークがリンクしつづけていなければ
ならないのだ。
・脳の各中枢から生じる意識を元に、シンフォ
ニーを生み出す責任を負った指揮者は、額から
うなじまでを毎秒40回定期的に行ったり来
たりする同調した電気活動の波だ。脳の全部位
がこの毎秒40回の波でなでられているにも
かかわらず、私たちはその音を聞くことも動き
を見ることもできない。最短の瞬間をとらえる
意識でさえ、いろいろなサイクルのネットワ
ーク活動を統合しなければならないからだ。
この波は、感覚情報処理をつかさどる中枢を
お互いにリンクさせ、さらにそれを、特に言葉
や感情が生まれたり、長期間の記憶を蓄積した
り、しゃべったり動いたりという意志が生まれ
る、扁桃体、海馬、前頭皮質など、心の意識的、
無意識的活動をつかさどるほかの部位とも
リンクさせている。
・毎秒40回時計は、神経学でよく使われている
脳波計(またはEEG)によって発見された。
だが、感覚情報と記憶を結ぶ役割については数年
前、より敏感な磁気脳波計(MEG)が開発され
るまでわからなかった。電気式のものと違って、
磁気脳波計は1立方ミリメートル単位で大脳皮質
の電気的変化を示すことができ、1000分の
1秒単位でその変化を計ることができる。初期の
EEGでの研究では、脳の電気的活動の毎秒40
回時計は予測できたが、その源や脳のさまざまな
部位でどのような相関的様相を見せるのかについ
てはわからなかった。MEGによって、その脳波
の時間と位置が明確になり、それが脳の深い部分
にある視床の異なる二つの神経細胞塊から来てい
ることがわかった。
・そのそれぞれの塊は自発的な発振器であり、脳
の各部に向かって伸びている線維組織を通じて
毎秒40回の脳波を送っている。二つの塊は同じ
周波数でバックグラウンド脳波を出しているが、
その機能は違う。一方の脳波は、身体から送られ
変わりつづけている感覚情報と脳とを結びつけて
おり、もう一方の脳波は、脳内の働きを同調させ
ている。この二つの視床発振器が同調していれば、
これらが感覚をつかさどる脳中枢のなかの神経
細胞ネットワーク活動を抽象的な思考や感情、
動作、記憶をつかさどる脳中枢と結びつけ、それ
によって意識が現れる。同調時計とこの二種類の
毎秒40回時計は、哲学者の言う心身問題を持ち
出し、精神が脳細胞と神経システムの表現として
現れることを可能にしているように見える。
・視床内の一つ目の塊は、毎秒40回の電気活動
で大脳皮質をなでている。この波は皮質の前部、
つまり目の上、額の裏側から始まり、頭頂部の
裏側、皮膚や筋肉からの情報を皮質が受け取って
いる場所を通って、耳や目からの情報を皮質が
受け取っている後ろおよびわきの部位へとすばや
く移動していく。この一番目の視床からの波は
半周ごと、つまり80分の1秒ごとに次の一なで
をスタートさせる。脳全体が意識に貢献している
からこそ、この約80分の1秒より短いインター
バルは認識されないのだ。
・脳内の神経細胞は、40分の1秒ごとに現れる
ひじょうに短い発火でお互い会話している(もし
くはしていない)ので、これは視床信号発生機が
皮質全体をなでるのと同調できる。毎秒40回と
いう脳の一なでは、地球の表面をなでていく日の
出、日の入りの動きに似ている。光と闇の境界線
がこの回転する惑星の表面をなでていくので、同
じ経度に住む人々は、それに従って同時に寝たり
起きたりする。日の入りとともに寝るとすれば、
違う経度に住んでいる人の就寝時間はばらばらだ。
私たちそれぞれの頭のなかの神経細胞でも、同じ
ことが起きている。信号が同時に到着すれば、そ
れが解剖学的にも場所的にも近くなくても、振る
舞いは同じになる。一日より短い間隔では、就寝
時間中の人々がいる惑星全体をなでることはでき
ない。それと同じで意識的な時間は、同調してい
る毎秒40回の波が皮質全体をなでる時間である
80分の1秒より短い時間は認識できないのだ。
・脳全体を前から後ろまでなでるのにかかる時間
より短い時間では、視床中枢の波が皮質の各部位
すべてを横切れないので、それ以上短い間隔で脳
全体を働かせることはできない。脳がひじょうに
近い間隔で届いた画像を分けることができない
からこそ、私たちは止まった画像の連なり動く
画面として見ることができるのである。フイルム
は、止まったコマを次々に見せていくが、各コマ
が12分の1秒で見せられているかぎり、私たち
はその絵のつながりを動く場面として見ることが
できるのだ。視覚に言えることは、ほかの感覚
による認識にも言える。短い間隔で二回つつかれ
ても、私たちはそれを一回としか感じない。
・---ある神経科学者が言ったように、意識は
基本量であり、ほかの単位で説明できるもの
ではない。時間や質量や電力と同じようなもの
であって、その産物ではないのだ。
∇また、眠っている時は、時間も速く流れて
しまいますが、夢を見ていると逆に長く感じる
こともありますね。
「心や意識は脳のどこにあるのか,ニコラス・
ウェイド,1999年」より
・科学者たちは、眠りのための主電源スイッチを
発見したという。このスイッチ、つまり脳の奥深
くにある細胞の小さな塊がオンになると、覚醒や
意識に関わるすべての脳細胞が遮断される。逆に
オフになると、脳は目覚める。このスイッチの
働きは、誰でも身に覚えがある、とボストンに
あるベス・イスラエル病院で神経学および神経
科学部門の責任者を務め、この研究を率いている
クリフォード・セイパー博士は言う。眠気が差し
てくる。部屋は暑く、講義は退屈で、どうしても
目を開けていられない。そこでスイッチがオンに
なり、意識は遠ざかる。
ただし、人々に眠気を催させ、居眠りへ誘うの
は、この仕組みの仕業ではない。それには、まだ
発見されてはいないが、照明を調整する調光器の
ような別の仕組みがある。新たに発見された細胞
の塊は、明かりを完全に切る役割をはたす。
今回サイエンス誌に発表されたのは、ラットに
よる実験結果である。しかし、人間にもまったく
同様な仕組みがあると考えられている。眠りを
調整する脳の回路は、すべての哺乳類で非常に
よく似ているためである。
この研究を示して、「興味深いですね」と
バンクーバーにあるブリティシュ・コロンビア
大学の神経科学準教授ピーター・レイナー博士
は言う。「たしかに、主電源スイッチのようです。
もしこれを調整できれば、眠りや目の覚めている
状態を少しずつ修正するといった、革新的な道が
開かれることになるでしょう。脳の細部にわたる
研究にも、これまでにない、新たな領域が生まれ
ます」
∇以下はおまけです。
出典「脳のなかの幽霊;V・S・ラマチャンドラ/
サンドラ・ブレイクスリー,1999年,角川書店,
原書1998年」より
−−−第九章 神と大脳辺緑系−−−
・余興は終わった。あの役者たちは、
さきほども言ったように、みな妖精で、
空気のなかに、淡い空気のなかに溶けていった。
われわれは夢と同じものでできている。
そしてわれわれの短い一生は、
眠りとともに終わる。
−ウィリアム・シェイクスピア
・この三十年間、世界中の神経科学者は、わくわく
するような神経系の細部を解明し、精神活動の法則
やそれらの法則が脳から生じる仕組みについて、
非常に多くの知識を積み上げてきた。その進歩の
速度は心をはずませるが、それと同時に、得られた
知見が多くの人を落ち着かない気分にさせている。
自分の人生が、希望も成功の喜びも大望もなにも
かもが、単に脳のニューロンの活動から生じている
と言われるのは、心が乱れることであるらしい。
しかしそれは、誇りを傷つけるどころか、人間を
高めるものだと私は思う。科学は−宇宙論や進化論、
そしてとりわけ脳科学は−私たちに、人間は宇宙で
特権的な地位を占めてなどいない、「世界を見つめる」
非物質的な魂をもっているという観念は幻想にすぎ
ないと告げている(これは東洋の神秘的な伝統である
ヒンドゥー教や禅宗が、はるか昔から強調してきた
ことである)。自分は観察者などではなく、実は
永遠に盛衰を繰り返す宇宙の事象の一部であると
いったん悟れば、大きく解放される。また謙虚さも
養わられる−これは真の宗教的体験の本質である。
簡単に言葉で表現できるような概念ではないが、
宇宙論学者のポール・デイヴィスが非常に近いとこ
ろに迫る表現をしている。
・私たち人類は、科学を通して自然の秘密の一端
を把握することができる。私たちは宇宙の暗号の
一部を解読した。なぜそうなのか。なぜホモ・サ
ピエンスが宇宙への鍵をもたらす理性のひらめき
を備えていなければならないのか。これは深い謎
である。私たちは宇宙の子どもであり、命のある
星くずだが、同じ宇宙の本質についてじっくりと
考え、宇宙の法則をかいまみることさえできる。
私たちがどのようにして宇宙次元とのつながりを
もつようになったのかは謎であるが、つながりが
あることは否定できない。
これは何を意味するのだろうか。そうした特権
にかかわってくるかもしれない人間とは何なのか。
私は人間がこの宇宙に存在することが、単なる運
命のいたずらや歴史の偶然、偉大な宇宙のドラマ
のなかの偶発的な出来事であるとは信じられない。
私たちは宇宙と密接に関係している。ホモ属の種
という身体的存在には何の価値もないかもしれな
いが、宇宙のある惑星のある惑星に心が存在する
という事実は、まちがいなく根源的な意味をもつ。
宇宙は意識のある生物を通して自己認識を生みだ
した。これがささいなことであるはずはない。知
性のない無目的な力の小さな副産物であるはずが
ない。私たちはそうあるべくして、ここに存在し
ているのだ。
・そうなのだろうか?脳科学はこれからもすばらしい
業績をあげるだろうが、私は脳科学だけでこの問題に
答が出せるとは思わない。しかし問題を提起できると
いうことそのものが、私たちの存在のもっとも謎め
いた局面だと私は思う。