投稿者 松本 日時 2000 年 12 月 30 日 17:22:24:
∇下記はいくつかの科学的発見に関する考え
です。これ以外にも例を探せばきりがないの
ですが、とりあえず、このくらいで。
(もうだいぶ参考図書の紹介をこのH/Pに書
き込んだので、書籍の紹介はしばらくの間中止
にしたいと思います。明後日で21世紀になり
ますが、人類が”意識”の正体を解く鍵の最初
の一つを手にするのは、何世紀ごろになるので
しょうね?)
「カール・セーガン科学と悪霊を語る;カール・
セーガン」”科学と人類の未来のために[解説]”
より
本書では、まず始めの数章で、似非科学と対比
しながら、科学の特徴が具体的な事例に基づい
て語られる。「科学は一つの思考様式だから」、
科学には限界があり、誤りがつきものである。
であればこそ、科学は、「想像力を必要とすると
同時に、訓練によって鍛えられた」思考法によっ
て、限界に挑戦し、誤りを自ら正すよう努力する
行為なのである。
「科学に権威はいない。せいぜい専門家がいる
だけ」の言葉が、このことをよく表している。
「科学の価値は、民主主義の価値と相性がよく、
この二つが区別できないこともある」のは、両者
とも自由な意見の交換が不可欠であり、互いの
誠実な証拠の開示こそが最善の道を発見すること
につながるからである。さて、右の文章の「科学」
を「似非科学」に置き換えたとき、その文意は成り
立つだろうか。・・・・・・・・・・・・・・・
「やさしい細胞の科学;室伏きみ子」より
”生化学はワインづくりの謎解きから始まった”
生命現象を物質の分子レベルで理解しようとする
生化学という学問領域は、現在もっとも進歩の激し
い研究分野の一つである。その生化学の夜明けは、
アルコール発酵、すなわちワインづくりの謎解き
から始まった。今日、ブドウ糖がピルビン酸になり、
さらに乳酸やエタノールに分解される解糖(発酵)
の代謝経路は、教科書を見れば簡潔にまとめられて
いる。しかし、その背後には実に多くの科学者達の
100年以上にもわたる努力の積み重ねがあった。
「ここまでわかった脳と心;Susan.A.Greenfield」
”復活祭の夜”より
1900年代の前半に、神経インパルスの性質を探る
研究が数多く行われた。研究者の中には、全くの
電気的な過程ではなく、化学物質が何らかの役割を
果たしているのではないか、と考えた人たちがいた。
1921年、オーストリアのグラーツ大学薬理学教授
だったオットー・ロウイが、復活祭の日の夜中に目
を覚ました。神経インパルスの伝導に化学物質が
関与することを示せる方法を思いついたのだ。
ロウイは手早くメモを書いて、また眠った。
だが、翌朝メモを見ると、何が書いてあるか読め
ない。ロウイは次の夜も目を覚まし、今度は実験
室に直行した。・・・・・・・・・・・・・・・
こうしてロウイは神経インパルスの伝導に化学
物質が関与していることを初めて明らかにした。
この化学物質は、今日では神経伝達物質と呼ばれ
ている。1933年には、その一つのアセチルコリン
が分離された。それ以降、数十種類の神経伝達
物質が発見されている。
「別冊・数理科学,重力理論」”反粒子の重力と
等価原理;藤井保憲”より
しかしながら、重力現象は一般相対論によって
完全に記述できると考えてよいのだろうか?
これは全く別の問題である。もちろんこれは、
「できる」というのが、いまでは最も正統的な
立場となっている。確かにこの30年ほどの間
の実験技術の進歩はEinstein理論支持の結果ば
かりを生み出してきた。それにもかかわらず、
純粋な一般相対論からのずれを求めて理論的、
実験的双方の根強い努力が続けられている。
その理由としては大きく言って2つの流れが
あるといえよう。
第一は一般相対論と、大まかに言って対等の
立場で、その完全性を疑うものである。たしかに
Einsteinの理には概念的な飛躍が多く、決して
一意的な結論とはいえない。またsimplicityと
beautyが指導原理となっている面も多分にある。
結局、物理学としての理論は、実験によって確
かめられる以外に正当性の保証はない。そういう
意味で数多くの代替理論alternative theoriesが
提案されてきた。その多くは不毛に終わったが、
Brans-Dicke理論と呼ばれる理論的模型が、いま
でも根強い人気をもち続けている。これについて
深く立ち入ることはしないが、観測技術の進歩に
よって実験物理学の対象になりつつある点が、
最近の発展を支えている。Dicke自身、そもそも
実験家として名を成していた人である。
もう一つの流れとして、現代版統一理論の発展
がある。独特の幾何学的理論としての一般相対論
と物理学の他の理論との統一はEinsteinの夢で
あったが、彼の存命中は実を結ばなかった。しかし
素粒子論の発展により、Planck mass〜10の19乗
GeVにおいて統一が実現されるという期待感は高
い。具体的には超重力理論や、その発展としての超
ひも理論が精力的に議論されているが、実験と正確
に比較できる予言をするまでには至っていない。