投稿者 松本 日時 2001 年 9 月 16 日 08:43:29:
∇因果律とか因果性、あるいはカルマといった考えを
厳密に適応することは生命の自由意志や意識の存在と
相容れないものがあります。
最終的には”意識”が何であるかが解明されなければ
わからないことなのですが。
「因果律」
---古典力学における原因と結果の関係
・古典力学の問題は、初期条件を定めれば、その結果
が数式で表されるか否かは別として、唯一つに定まる。
もし、世界中の全粒子の運動方程式と初期条件を知っ
ている悪魔---これを「ラプラスの悪魔」と呼ぶ---が
存在すれば、この悪魔は世界の未来を知り得るだろう。
「脳=因果性に従う物質系?」
・意識を生み出す脳のニューロンの活動は、究極的に
は相互作用する素粒子からなるシステムの振舞いと
して記述される。
・私たちの思考は、一見自由に起こるように見えるが、
しかし、その背後には、因果的な物理法則に従って
動く脳がある。
・私たちは、一切の心的表象を持たない「ゾンビ」で
あった可能性はあるのだろうか?
・尚、量子力学では、古典的な因果性が破れていると
いう見方もあるが、アンサンブルのレベルの振舞いは、
厳密に記述できる。つまりアンサンブルのレベルでは
因果性が成立していると見なせる。
「リベットの実験」
・我々にとって、意識的な今とは半秒過去のことだっ
た。つまり、我々の意識にはモニタ機能しかなく自由
意志は幻である。
「脳波計や磁気脳波計などによる観察結果」
・脳には2つの発信器があり、同じ周波数でバック
グラウンド脳波を出している。一方の脳波は、感覚
情報と脳とを結び付けており、もう一方の脳波は、
脳内の働きを同調させている。この2つの視床発信
器が同調していれば、意識が現れる。
・視床内の一つの発信器は、大脳皮質を毎秒40回
なでている。そのため約80分の1秒より短いイン
ターバルは認識されない。
・100分の1秒以下の間に2つのクリック音がし
ても、それを聞き分けることはできない。
・脳が非常に近い間隔で届いた画像を分けることが
できないため、テレビの止まった画像の連なりを動
く動画として見ることができる。
∇従って、ハンフリーズのように、厳密なカルマの
法則と自由意志を人に同時に適応することは矛盾が
あり、どちらか片方を捨てなければならない。
つまり、人に対し厳密にカルマの法則が適応されて
しまうと、人の自由意志は存在できなくなってしま
う。ただ人生という3次元の映画を意識によって
モニタするのみという体験に制限されてしまう。
また、原因と結果との関係も単純化されており、
ゲームの世界なら適応できるようにプログラムを
組めば可能だが、現実の世界への適応の可能性に
ついては説明が無理と思われる。
少なくとも自由意志と共存できないとすると厳密な
カルマの法則はナンセンスではないのだろうか?
∇未来において意識の解明が進み、自由意志の存在
が証明され、ゆるやかな因果性を人に適応すること
が可能となる時代がくるのだろうか?
「カルマの法則」
---ガラテヤの教会にあてた聖パウロの手紙
「人は自分の蒔いたものをまた刈り取ることになる」
・自然科学の法則と同じように世界を記述する法則?
---ハンフリーズのカルマの教えの説明
・苦しむ者は自らの自由意志を意図的に用いた結果と
して苦しんでいるのだ。
・手足の動かない者、こびと、生まれながらの聾唖者
や盲者に同情を示してはならない。−なぜなら彼らの
苦しみは、彼ら自身の過去のおこないから生じたもの
だからである。
・我々は彼らとともに嘆き悲しむのではなく、新しい
脳が自分自身の責任を自覚し、いまの生に結果を生じ
させた悪行を打ち消すことにつながる、新たな原因を
作り出せるよう、手を貸すべきである。
[出典]
「1951年にペンギンブックスとして出版」
「1983年にカルマと再生の新版」
∇下記のような転生の解釈の悪用も自由意志をもた
ない過去に存在したゾンビたちによってなされた
のであろうか?
「輪廻転生」
---バカヴァッド・ギーター
(輪廻転生を説くヒンドゥー教の聖典のひとつ)
・敵方に自分の親族がいることから戦意を喪失して
しまった戦士アルジュナに向かって、クリシュナが
「殺しても仮の肉体が消滅するだけで、人間の本性
は消えない。だから、相手を殺すことをためらう必要
などない」と説き、アルジュナを戦闘に駆り立てる。