投稿者 松本 日時 2001 年 10 月 29 日 22:42:31:
「自然界における左と右,マーティン・ガードナー,1992年」
”27章−単極子”より
・19章で学んだように、磁荷は量子化できること、
そしてそれから自動的に電荷の量子化が出てくる
ことをはじめて提唱したのはディラックであった
(1931年)。
もしそうならば、かの有名なジェイムス・クラーク・
マックスウェルの電磁気の四つの方程式にみごとな
対称性が導入されることになる。
・これらの方程式こそ最初の統一場理論を記述した
ものであった。
電気と磁気とは一つの力の表われであるということ
が示されたのである。
ハンス・クリスチャン・エールステッドが発見した
ように、流れている電流は磁場を生じ、マイケル・
ファラデイが発見したように、磁場の変化によって
電流が生ずる。
さらに、マックスウェルは「光」のスペクトルの中
のあらゆる輻射はただ一種の波で磁場と電場の間を
振動し、互いが相手の場を作りだし、「押し」出して
いるのだ、ということを予言していた。
・マックスウェルの統一理論では、電場は静止して
いる電荷によっても磁場の変化によっても生成され
るが、磁場は電場の変化によってしか生成されない。
奇妙にも対称性の欠如があらわになったのである。
電子や陽子のように正か負の電荷を一単位ずつもっ
ている粒子がある。
では、なぜ北極か南極かどちらか一単位の磁荷しか
もたない粒子が存在しないのだろうか。
物理学者は、何か基本的な法則によって否定されな
いかぎり、それは自然の中に存在することが許され
ると考えたいのである。
かつてマレイ・ゲルマンがいったように、全体主義
の原理、すなわち「禁止されていないことはすべて
強制される」のである。ディラックが予言した反粒
子の存在は正しかったので、物理学者は磁気単極子
の存在を示唆する彼の方程式を軽々しくは見過ごせ
なかったのであった。
・1974年になって単極子の議論は重大な転機を迎え
た。オランダのジェラルド・トフートフとソビエト
の連邦のアレキサンダー・ポリヤコフが別々に、
ある種の大統一理論(GUT)に含まれる新種の
単極子について理論を構築した年であった。
これらはおのおのGUT単極子とかGUMとか、
あるいはもっと平易に超重単極子とよばれている。
もしこの理論が正しいとすると、粒子としては異常
な、具体的にはアメーバほどの質量をもっている
ことになる。
この超質量のため光よりは動きが極端におそいが、
運動量は十分大きいので、ほとんどすべての物質を
通り抜けてしまう。
また、きわめて大きい質量をもつために、今日の
どんな加速器を使っても人工的につくりだすことは
不可能である。
・GUT諸理論では、ビッグ・バンのあと
10^-35秒までの間に、あまりの高温のため原始
のスープの中から超重単極子が凝縮しただろうと
予言している。
互いに反対の極性をもつ単極子は消滅し合い、一部
が消滅せずに残る。
この生き残りの単極子が「暗黒物質」に関与して
いるのだという考えが提案されている。
これは銀河系のクラスターや、その他の宇宙論上の
特質を説明するのに不可欠な見えざる物質である。