一人に二人分の意識

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|> ∇意識の脳依存性についての説明の一つですが、 |> 左脳と右脳が完全に分離されてしまうと一人の |> 人間に二人分の意識が生まれるとすると、これ |> はいったい何を意味するのだろうか？ |> 「脳と意識，苧阪直行編，1997年」より |> ・健常者の大脳では左半球は右半球に入ってきた |> 刺激を知覚できる。 |> 例えば、左手で触った刺激は右半球にいたる。 |> 右半球は左半球と脳梁を介して連絡しているので、 |> 左半球に至った刺激について知ることができる。 |> ・一方、分離脳患者の右半球に入ってきた各種の |> 刺激は右半球で知覚されるが、その知覚内容に |> ついては左半球は意識していないことが明らか |> にされている。 |> ・このような現象は触覚だけにとどまらず、視覚 |> についてもみられる。 |> ・Sperry以前の「脳と意識」に関する研究は、 |> 大脳のどの部分が損傷されると意識障害が生ずる |> かという形でしか研究されなかった。 |> それがSperryによって、はじめて、「右脳だけで |> 意識があるか」、「左脳だけで意識があるか」と |> いう問題、そしてさらに、「右脳にも左脳にも同時 |> に意識がありうるか」という問題が問われた。 |> このSperryの「問い」は分離脳患者を対象とすれば |> 検証可能なものであったので、脳と意識についての |> 新しい地平をわれわれに見せてくれた。 |> 検証可能な新しい問いを提出したSperryらの研究は、 |> この領域での大きな進歩をもたらしたといってよい。 |> ・分離脳患者の右脳にも左脳にも意識があるとする |> とSperryの説を聞くと、いちばん初めにでてくる |> 疑問は、分離脳患者が日常生活で２人の人間が存在 |> するように振舞うことがないのはどうしてなのかと |> いうことである。 |> Speeryは、人間には３つの統一要因があるために |> そのようなことが起こらないと述べている。 |> 第一は、大脳の両側性感覚投射系の存在である。 |> 第二は、眼球の探索的な動きである。 |> 第三は、脳幹を介しての左右脳の結合である。 |> ・分離脳の左半球のみでも意識があり、右半球 |> では意識あるいはそれに近縁のものがあるとして、 |> この２つは同時に存在しうるのであろうか。 |> Sperryは同時に２つが存在しうるとして、３つの |> 証拠をあげている。 |> ・第一は1966年の段階ですでに論じた「左右の脳 |> が異なる、そして互いに拮抗する課題を並行して |> 行なえる」ということである。 |> ・第二は異なる内容の「視知覚」が左右の脳に |> 同時に発生しうると考えられるからである。 |> ・第三は左半球の反応に対する右半球の否定反応 |> である。