投稿者 松本 日時 2001 年 12 月 09 日 10:34:22:
回答先: 脳について 投稿者 松本 日時 2001 年 12 月 01 日 09:58:57:
|> ∇分離脳については、下記の三つのH/Pがありました
|> ので、参考にして下さい。
∇下記は心身問題と最近の分離脳の研究から得られた
結果についてです。
(分離脳と二つの意識に関する補足です)
「左の脳と右の脳」サリーP.スプリンガー&ゲオルク.ドイチュ,
1997年,原書1993年(第2版)より
[二つの脳,二つの心?]
・4世紀以上も前に,フランスの偉大な哲学者Rene
Descartesは,脳の基底部にある松果体が意識の座で
あるという結論に達した。
彼の結論は,意識は単一であるとする信念と,脳内で
二つではなく一つしかない組織で彼が発見できたのは
松果体だけであった事実とに基づいている。
・心は身体から独立しているという主張は,Descartes
の二元論として知られるようになった。
現代の懐疑論者たちの中には,これを「機械の中の幽霊」
と呼ぶ者もいる。
一般に身体と心の関係をめぐる哲学上の問題は,心−身
問題と呼ばれている。
・過去25年の間に,分離脳患者の研究結果から,
分離脳手術と心−身問題との関連についていくつかの
疑問が提出されてきた。
もし脳外科医のメスが意識を分離するのであれば,脳
を分割することが心を分割することになる。
この議論をさらに進めて行くと,心は脳であるという
命題,あるいは少なくとも心は脳の働きから生じる
という命題を認めざるを得なくなってくる。
・分離脳手術によって意識が分割されることは心が
即ち脳であることを意味している,という前提のもとに
議論を進めていくこともできるが,この領域における
議論の対立のほとんどは,分離脳患者がたとえ一時的
にであったとしても実際に二つの意識を持っていること
を示すことができるかどうかに集中している。
[Roger
Sperry]
・分離脳患者の意識が統一性を保っているような印象
を与えるのは錯覚によるもので,こうした錯覚は,
二つの脳が,空間内の同じ位置,同じ感覚器官,
実験室の外の日常生活で同じ体験を共有していること
から生じてくることになる。
[John
Eccles]
・分離脳患者に二つの個別の意識があることも,意識
が交連切開術で分割されることにも反対し,右半球は
真の思考を営むことはできないと主張している。
彼は,ヒトが動物と共有する「単なる意識」と,ヒト
に特有で,心についてのあらゆる概念にとって本質的
なものにあたる言語,思考,文化の世界とを明確に
区別している。
[Joseph LeDoux,Michael
Gazzaniga]
・P.S.は,言語機能が両半球で発達している点で特殊
な例といえるが,同じ一人の人間の中に二重の意識が
明白に実証された結果がもたらす理論的示唆は,この
一症例を越えて広く敷衍することができる。
この結果は,脳の分割は意識の分割を生むという昔
からの主張を実際に示してくれただけではなく,
「ヒトに固有な心の属性の本質と起源」を示唆して
いると考えている。
”P.S.に関する実験”
・P.S.は,特定の単語をどのように感じているかを,
1(大好き)から5(大嫌い)までの数字を指差して
5段階評価を行なうように求められた。
単語のいくつかは患者にとって個人的な意味を持つ
ものであった。
例えば”Paul”(患者の名前),”Liz”(患者の恋人
の名前)などである。
「どのくらい好きですか」という質問の後で左視野か
右視野にこうした単語が提示された。
・その結果,P.S.の右半球もこうした質問に答える
ことができ,時には右半球の答えや評価が左半球の
ものとは異なる場合もあることが明らかになった。
たとえば,単語の好き嫌い評価テストでは,左半球
に比べ右半球が行なった評定が,一貫して「嫌い」
のほうに片寄っていたのである。
またやってみたい職業を聞かれたときには,P.S.の
健全な左半球は製図工と答えたのに対して,右半球
は「自動車レース」と綴ったのである。