投稿者 ながね 日時 2003 年 7 月 04 日 09:14:53:
小学校4年か5年生のころの話です。
夏の夕方、母が庭で水撒きをする横で遊んでいました。
ふと、北の空を見上げると、本当に大きくて、はっきりとした月が、
見えました。その月は銀色に近い月で、真ん丸でした。
当時の私には、月を愛でる気持ちはなかったのですが、その月は
あまりにもはっきりしていて、きれいでした。
でも、少し変だなという気持ちもありました。
それは、辺りがまだ明るいのに、不自然なほど月がはっきり、間近に
見えるからです。
それから少しの時間が経ちました。何気なく南西のほうを見ると、
いつも見る月が、いつものように出ていました。
遠くてはっきりとはしていませんでした。
私は急いで北を振り返りました。
何と、そこにも月はありました。さっきのように、はっきりと
存在しています。
私は母に北の空を指差して、
「あれって月だよね」
母はそうだと言いました。
「じゃあ、あれは?」
今度は南東の空を指差しました。
母も北の空と南東の空を交互にみて、本当だねえ、と言ったきり
返事に困っていました。しばらく二人で見比べていました。
本当の月は南東の月で、北の空に出ているのは何だかわからないと言い、また作業に戻りました。
私はひとり、もしかしたら妹も近くに居たかもしれません。
ときどき、その不思議な、空に銀紙を貼ったようなわざとらしい月を
見上げて、2つの月の行方を見守っていました。
すると、南の月が形を変え始めました。
その形というのは、液体でなければ考えられないほどの
垂れそう、とか複雑な形状をいくつか変えていました。
もしかして、私が見ていることを知っていて誰かがいたずらを
しているのかと思いましたが、そんなことをできる人が
いるわけはないと思い直し、裏庭に回っていた母を呼びました。
母は気味悪がって、何だか分からないと言ったきり、家の中に
入ってしまいました。
あいかわらず形を変えつづける銀色の月に、私もいい加減
腹がたってきました。周辺の空気まで、銀紙のようにこわばって
きたような気がしたからです。なんか、ギギギというような
音まで聞こえたような記憶があります。
−−−−いい加減にしてくれないかな。
すると、ちょうどそのとき、向かいの家の男の子がでてきて、
南の月を見るなり、あっ、UFOだと言ったのです。
私はUFOなんて信じていなかったので、そんなわけないでしょ、
と思うと同時に、月の真似をする何かを見て、何ですぐUFOだと
思うわけ?と感じていました。
男の子は私に対し、なぜすぐに知らせてくれなかったかという
怒りのすて台詞を残し、家族に知らせに走って行きました。
私は理解不能な何かにひどく疲れ、馬鹿にされたような悔しさが
残りました。
当時、結局何なのかわからず、また誰に話したら
この気持ちを受け止めてもらえるのかわからないため、
ずっと記憶の片隅において置きました。
いまだに何なのか分かりませんが、大人になって、
私ひとりが、ひとりで悩むようなことではないと思え、
改めてあれは何だったのだろうと思う昨今です。