投稿者 コスモス 日時 1999 年 10 月 05 日 10:56:12:
回答先: 30648倍 投稿者 瑠璃 日時 1999 年 10 月 04 日 20:22:16:
コスモスです。
原子力、放射線になじみのない人々が今回の事故を
正確に理解するにはどうしたらよいのでしょうか?
私に何ができるのだろうか?と力不足を痛感しています。
厳密には専門書の説明と違う部分があるかもしれません
が、以下に簡単な説明を書きました。
|> もともと没だったこの文書。やはり書き込む事にしました。
|> なんらかの参考になれば良いのですが。
|> ----------
|> とうとう人為的な事故が起きてしまった。
|> 30648、この数字が凄まじさを物語っている。
|> 「物体がどのくらい放射線を吸収したかをしめす量を吸収線量といい、国際単位系に属するグレイで表す。1グレイは1キログラムの物体が吸収した放射線のエネルギーが1ジュール(J)であるときの吸収線量である。放射線医学に貢献したイギリスの物理学者グレイの名に由来する。
|> 現実問題として吸収線量が1グレイでも、物体や放射線の種類がちがえば、その影響もちがってくる。たとえば生物がガンマ線を吸収したときと中性子線を吸収したときとでは、同じ吸収線量でも中性子線のほうが影響が大きい。線量当量は放射線防護の目的でつかわれる量で、吸収線量に放射線の種類そのほかに依存する係数をかけてあらわしている。国際単位系のシーベルトは、放射線をうける生体1キログラムごとに何ジュール相当のエネルギーがとりこまれるかをあらわす。」
|> "放射線の単位" Microsoft(R) Encarta(R) 97 Encyclopedia.
|> (C) 1993-1997 Microsoft Corporation. All rights reserved.
グレイという呼び方の単位は上の記述のとおりです。
人体への影響を評価する場合、上の記述のとおり、
放射線の種類によって影響が異なるので、線量等量
(生体への影響の度合い)という考え方で判定します。
こちらはシーベルトという単位を使います。
|> 数式では次のようになると思う。
|> 1[Sv] = 1[J/kg] = 0.238[cal/kg]
|> (1キロにつき0.238カロリーの放射能を浴びているということ)
これは吸収線量なので、グレイ[Gy]で記述すべきです。
また言葉使いの問題ですが、「放射能」とは放射線を発生する物質
の性質を示します。
また今回の事故の様に、放射性物質が放射線管理区域から漏れ出
した時、「放射能漏れ」と記述されます。
単に放射線管理区域の外での放射線量が基準より高くなった場合
のは「放射線漏れ」と記述されます。
この様な場合、「観測された放射線量は..グレイ」と表記します。
|> 天然に存在する放射能の影響は年間で1ミリシーベルト。
|> 日常生活で身体に取り込むことが可能な量(許容量)である。
|> A = 1[mSv/kg/year] = 0.001[Sv/kg/year]
|> これを1時間あたりにすると、
|> A = 0.001/365/24[Sv/kg/hour] = 1.142×10^-7[Sv/kg/hour]
こちらが線量等量(シーベルト[Sv])の正しい表記です。
|> 一方、昨夜放送時(9/30夜)の測定値では1時間に3.5ミリシーベルトと聞いた。
|> B = 3.5[mSv/kg/hour] = 3.5×10^-3[Sv/kg/hour]
この表現はおかしいと思います。
|> この測定地点では通常の何倍の放射能を浴びることになるのだろうか。
|> B/A = 30648[倍]
|> この数値が出たときにはぞっとした。
|> 何か、何かしなければと思いつつ、何もできない自分の非力さが恨めしかった。
|> こんな時どうすれば良いのでしょうか。誰か教えてください!
|> 放送では通常の7〜8倍と言っていたので、単位が間違っている可能性がある。
|> 原子力に関する資料が無いため、情報があったら教えていただきたい。
「臨界事故」、「放射能漏れ」に関する表現は適切であったと思いますが、
上に説明したとおり、現場で測定されたのが、
照射線量:放射線の強さ。
吸収線量:物体に吸収された放射線のエネルギー量。
線量等量:放射線の生体的影響量。
のいずれかがはっきりせず、相当混乱があったようです。
「放射能漏れ」と報道されたのに、放射能の数値は示されて
いません。(放射能はベクレルという呼び方の単位を使う)
但し、正確に報道されても専門家にしか分からないと思わ
れますが。。。
|> それにしても、TVで「シーベルト」という馴染みのない単位を使っていたことに抵抗を感じた。
|> パニックをおそれて伏せたことも考えられるが、その後も説明はない。なぜなのか?
|> 人命救助は最優先であるが、
|> 大衆が状況を正確に把握すること、原子力の正しい知識を知ることは現代において急務だと思うが。
「グレイ」、「シーベルト」という単位の呼称は、SI単位系で
(正確には補助単位)定められたものです。
台風の中心気圧を示す「パスカル」という単位と同類です。
原子力に限らず、各種の化学物質、医療技術を正しく理解
する取り組みが必要でしょう。
科学技術はどんどん進歩、変遷しております。
単なる知識の詰め込み教育には限界があると思います。
また一般の人々が最先端の科学知識を全て理解するのも
大変でしょう。
まずは諸々の科学技術情報を収集し、一般の人々に分かり
易く情報公開する組織的活動が必要でしょう。。。
コメントが長くなりましたが、少しでも役にたてば幸いです。