投稿者 松本 日時 2002 年 7 月 07 日 09:31:03:
回答先: ニュートンの弟子 投稿者 松本 日時 2002 年 7 月 06 日 20:01:02:
|> 「ニュートン自身は,彼の教えに従順な,後の世代
|> の科学者たちより,ずっと深く自分の学問体系に
|> つきまとう弱点というものを承知していた。
∇アナロジーは有効ですが、落とし穴もあり、
注意が必要と思われます。
師と同じアナロジーを”オウム”のように繰り返して
いても、ニュートンの弟子たちのように、先に進む
ことはできないように思われます。
「アナロジーの力,キース・J・ホリオーク,
ポール・サガード,1998年,MENTAL LEAPS
Analogy in Creative Thought,1995年」
第7章 説明におけるアナロジー
[アジアのアナロジー]
・これまでの例は西洋文化からとったものであったが、
アナロジーは古代インドや中国の宗教書、哲学書に
おいても重要であった。
紀元前400年以前に書かれたウパニシャッドの二つの節
を取り上げてみよう。
一つ目は存在を循環的にとらえるヒンズー的見方を表現
するために、アナロジーが用いられている。
・世界は巡る神の車輪
そして、その縁にすべての生き物をのせて回る
世界は神の川
神から流れ出、神に戻る
この永久に巡る車輪の上で
それぞれの自己が回る回る
生から生へ
・もう一つは自我と純粋意識の関係を表すために
アナロジーが用いられている。
・水に投げ込まれ溶けた塩の固まりのように
水のどこをとっても塩辛いのに
取り出すことができないように
汝よ、それぞれの自我は
純粋な意識の海に溶けている、永遠に不死に。
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[まとめ]
・私たちは、アナロジーが形而上学(神、他者の心)、
認知論(プラトンの洞察、ノイラートの船)、倫理
といった哲学の種々の中心的流れにおいて重要な
役割を担ってきたことを見てきた。
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最も有効なアナロジーは「原因」と「結果」の
ように、直接その説明にあった構造をアナロジー
に与える、高次の関係にもとづくシステムレベル
の対応づけにもとづいている。
意志決定のように、説明には多数のアナロジーを
用いることが良い。
競合するアナロジーの評価は競合する仮説の評価
プロセスの一部である。
第8章 科学におけるアナロジー
[教訓]
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・たとえば、物理学を勉強しはじめた学生は、
ラザフォード=ボーアの原子モデルを太陽系の
アナロジーで教えられる。
しかし、このアナロジーによって軌道モデルが
作り上げられると、後で量子力学の概念を学ぶ
ときに邪魔になる。
したがって、新たなモデルを教えるには、学生
にアナロジーを作らせたり、古いアナロジーの
欠点を指摘したりといった、アナロジー療法を
必要とする。
また、学生が教師とは別のアナロジーや違った
説明を思いつくという、別の問題が生じるかも
しれない。
そのときには、おそらく説明の一貫性の原理を
用いて、異なる仮説間の評価について学生を
指導しなければならないだろう。
・アナロジーがこれほど多くの落とし穴をもっ
ているなら、なぜ使うのだろうか。
教師はアナロジーなど用いずに、基本的な題材
を学生に単に提示することで切り抜けるべき
なのかもしれない。
民主主義はそれ以外の制度を除けば最悪の政治
制度だという批判が思い出される。
同じように、学生に見知らぬ領域の理解の手が
かりを与えるのに、アナロジーに代わる手段が
ないことが多い。
パンダとテレビ番組の例のように、アナロジー
による思考はその不完全さにもかかわらず、
他の利用可能な競合手段よりもましな認知的
役割を果たすがゆえに、生き残っている。
ダーウィンやマックスウェルがその著名な
理論を発展させる上でアナロジーをうまく
作り上げたように、初心者にも進んだ学生
にも、うまく選ばれたアナロジーから得る
ものがあるだろう。
アナロジーによる説明は、教育実践において
重要な部分であり続けるだろう。
類似性、構造、目的の制約に注意することで、
教育におけるアナロジーが改善されるよう私
たちは望んでいる。