投稿者 Vosne 日時 2004 年 9 月 19 日 16:38:55:
∇温暖化や寒冷化は、過去の歴史的痕跡から見る
と、たびたび起こっているようです。
2100年には日本の平均温度は3℃ほど温暖になると
予測されていますが、約6000年前(紀元前約4000年)
には北半球中緯度ですから、例えば日本の平均夏季
温度は、現在よりも2〜3℃温暖であったらしい、
ということのようですね。
「気候変動,W.J.バローズ,シュプリンガー・フェアラーク
東京,2003年」より
・約6000年前頃までに,氷河期後の温暖化は
ピークを迎えた。
このころの樹木の痕跡によると,北半球中緯度の
平均夏季温度は,現在よりも2〜3℃温暖であった。
樹木は北に広がっただけではなく,標高の高い
高地にも広がった。
例えば,英国諸島では現在の森林限界よりも200〜
300mほど標高が高いところにも樹木が育っていた。
この段階の気候は,北半球高緯度に湿潤で温暖な
状態をもたらした強い西風が特徴とされており,
一般的には「大西洋」期として知られている。
それは,もしも現在の地球温暖化が続いたならば
期待される状態の例として見られることもある。
低緯度での温暖な状態は,より強い夏季モンスーン
循環に最も顕著に現れた。
それにより,亜熱帯の大部分に強い降雨がもたら
された。
これは,インド亜大陸のみならず,中東やサハラ
砂漠の大部分にかけても影響を与えた。
ペルー・アンデス高地の氷河で掘削された氷柱に
よると,8000年前〜5000年前の時期は,熱帯の最
温暖期であったことが確認されている。
おそらく,この温暖で湿潤な時期は,1万年前ごろ
に中東の「肥沃な三日月地帯」から始まった農業の
普及によい状態をもたらしたであろう。
・5500年前頃から気候は徐々に寒冷化し始め,乾燥
化も進んだ。
この傾向はエジプトと中東の古代文明の成立と同時
期に起こった。
そのため,それ以降は気候変化の物理的痕跡は,
さまざまな文明の歴史的記録と組み合わせることが
できる。
・宗新世の最温暖期以降の大きな傾向で,最も明瞭
な例は,サハラ砂漠の乾燥化である。
もっと一般的な例としては,約4000年前に中東と北
アフリカで降雨の減少証拠がある。
同時に,カナダ北極圏とシベリアの森林の北限は南
方に後退していた。
この傾向は,紀元の最初の1000年の終わりごろまで
続いた。
・世界中の山岳氷河は,紀元前2500年ごろに拡大し,
紀元前2000年ごろには標高の高い方に後退したという
多くの痕跡が残っている。
その後数世紀にわたって,地中海付近の乾燥化と時
を同じくするように,山岳氷河はまた拡大した。
・紀元前2000年以降の氷河の前進を伴うこの寒冷化
の最も劇的な影響は,北ヨーロッパ付近に起こった
ようである。
樹木の年輪のデータによると,気候は紀元前1700年頃
までは温暖で乾燥しており,その後紀元前15世紀
までは寒冷化し,約70年間程の顕著な温暖化が起こっ
た後,紀元前1400〜1230年頃からさらに寒冷で湿潤な
時期が始まったことが分かる。
この寒冷化の影響によって,アルプスの氷河はそれ
以後には見られないほど拡大した。
水面が上昇した紀元前1200年ころには,広範囲に多く
の湖畔の居留地があったという痕跡がある。