意識の声 No.84 より

1997年 7月号

 

 全国の維持会員の皆様にはお元気のことと存じます。私も連日大奮闘しておりますから、ご安心下さい。平素の多大なご支援のほどに深謝仕ります。つい先日六月号をお送りしたと思っていましたらアッというまに七月になってしまいました。全く人生は時間の流れとの闘いです。

 

「六月は美女美男、都会を離れ、近郊の別所に移りて、蔭多かる庭、花園の泉、たえず緑草をうるおすあたりに休らい、人みな恋の奴なり。七月は都に帰り、清らかなる室にて、絹のすずしに暑を凌ぐ」

 

 これは一三世紀のイタリアの詩人フォルゴーレの「一年」と題する詩の一部分で上田敏の名訳です。上田敏は天才的な訳詩人で、この詩も二一〜二歳の頃に翻訳したというのですから卓抜した才能がしのばれます。明治時代には傑出した文人が輩出したのですが、特徴は外国語に通暁した人が多かった点にあります。これからみますと今の時代は一般にレベルが落ちたような気がします。教育に難点はなく人間の知能が劣化したわけでもないのですが、何か別な要素があるのでしょうか。