投稿者 コスモス 日時 2002 年 10 月 10 日 14:31:25:
回答先: プルトニウム 投稿者 松本 日時 2002 年 10 月 06 日 09:55:38:
コスモスです。
松本さん、熱心に調べていますね。
私も見習わなければならないと感じております。
昔のことですが、私がわずかばかり知っていたことを
書いてみます。
およそ20年くらい前の日本の原子力政策の構想では、
1.軽水炉(現行の原子力発電所の原子炉,濃縮ウラン燃料)
を将来的には,
2.高速増殖炉(プルトニウム燃料の原子炉)
3.新型転換炉(低濃縮ウラン+プルトニウムの混合燃料)
に代えていこうというものでした。
しかしながら,この計画は政治的に進められた色合いが強かったらしく
高速増殖炉や新型転換炉の開発に熱心なのは,科学技術庁や動燃(
動力炉・核燃料開発事業団)だけだったようです。
電力会社は使用済みの濃縮ウラン燃料を処分する必要があるので,
核燃料の再処理(プルトウムの生産)については積極的でしたが,わざ
わざ別の形式の原子炉を発電に使うのはリスクが大きすぎると考えて
いたようです。(表向きにはそうは言いませんでしたが)
その代わり電力会社は、濃縮ウランにプルトニウムを混ぜる、混合燃料を
軽水炉に使うことを早くから検討していて、1980年ごろには試験燃料が作
られていました。通産省の認可等に時間がかかり、実際に原子炉に使う
までにはそうとう待たされたようです。
この話を聞いたのは、入社1年目でしたが、軽水炉で混合燃料を使用する
計画がかなり進んでいることに、当時、私自身でもかなり驚きました。
原子力学会なども、高速増殖炉の研究開発が進むこと自体には賛成なの
で、あえて国の見込みの甘さを指摘する考えはなかったようです。
というよりは、学会はあくまで研究が本業であり、将来の計画や実用化の
可能性の判断などはやはり企業側で検討する問題だと思います。
軽水炉用のウラン+プルトニウムの混合燃料は,ドイツやフランスでも
80年代ころから使われていたそうですので、当時の日本の電力会社の
判断は妥当だったと思われます。
反面、動燃はその後、不祥事の限りを尽くしたあげく、解散してしまいま
した。(将来の見込みの甘かった人たちがいたせいかもしれません)
どうも我が国の政策には根本的に無計画?、無責任?な部分があると
思います。(国の計画が全部がダメとはいいませんが)
国の政策だからといって、むやみにその流れにのると、後からとんでも
ないことになるようです。
|> ∇以下は、プルトニウムに関する事実の認識
|> の違いです。この二つの本の書かれた1996年
|> と2000年の4年間の時期の違いはありますが、
|> 1993年には既にNHKで紹介されているという
|> ことのようです。
|> 日本の学会のレベルの問題なのか政治的な
|> 思惑の問題なのか、それともどうしても避け
|> られなかったことなのかを考えてみる必要
|> もありそうですね。
|> 1.「原子炉の暴走;SL-1からチェルノブイリ
|> まで,石川迪夫,1996年,日刊工業新聞社」
|> [3.1.4 制御棒価値]
|> 余談になるが、増殖炉というのは炉心の周囲に
|> ウラン-238を配置して、炉心から漏れ出す中性子
|> をつかまえては、プルトニウム-239を作り出す
|> よう工夫した原子炉で、核分裂一個当り一個以上
|> のプルトニウム-239ができる。こんな原子炉が
|> 実用化すれば、ウラン-235をいくら燃焼させても、
|> 新しい核分裂材料であるプルトニウム-239が、
|> それ以上に生産されるということになる。
|> 使えば使うだけ燃料が補給されていくという、
|> 世にも不思議な、金の成る木のようなうまい話
|> ですぐには信用できかねるが、科学的にはこの
|> 事柄は正しい。
|> 動力炉・核燃料開発事業団が福井県敦賀市白木
|> に建設した原子炉「もんじゅ」がそれである。
|> 本書の執筆中、二次ナトリウムの漏れ事故を
|> 起こして大問題となっているが、この無限の
|> エネルギー資源を作るにも似たようなうま味の
|> ある発想は、将来の人類エネルギー問題解決の
|> ために、ぜひ具現化していかねばならない。
|> だが、残念なことに、今日の世界情勢では、
|> テロリスト達がプルトニウムを使用して原爆
|> を作るのではないかとの心配が大きく、米国
|> が開発に消極的である。その影響もあり、
|> 原子力推進諸国の中でもエネルギー資源の
|> 少ない日本とフランスが、研究を行っている
|> という状況下にある。
|> 2.「原子力発電で本当に知りたい120の基礎
|> 知識,広瀬隆,藤田祐幸,2000年,東京書籍」
|> [20 プルトニウム増殖の理論は事実上破綻した]
|> 現在、電力業界でも、高速増殖炉の成功を信じ
|> る人間はほとんどいないと言われる。
|> それは、前述の技術的な危険性、莫大な開発
|> コストと無関係な、さらに基本的な問題による。
|> それは「核分裂しないウランを利用してプルト
|> ニウムを増殖する」というもくろみそのものが、
|> 実際の増殖炉リサイクルのなかで効率的に起こ
|> らないことが判明したからである。
|> 最近の知見によれば、高速増殖炉が無事故で
|> 運転されても、本項の冒頭で述べたように
|> プルトニウムが百倍になるのではなく、九十年
|> 後にプルトニウムがようやく二倍になる可能性
|> があるにすぎないという。この驚くべき事実は
|> 93年5月23日にNHKスペシャル「プルトニウム
|> 大国・日本」で電力会社サイドの見積もりとし
|> て紹介され、のち動燃の幹部も認めている。
|> この理由もあきらかにされている。まず第一に、
|> これまで語られてきた増殖率は、原子力産業を
|> 推進するための宣伝目標値であって、実物の
|> 原子炉のなかでは、そのように高い効率で
|> プルトニウムが生まれないこと。
|> 第二に、増殖炉を運転するためには、燃料の
|> プルトニウムを再処理によってリサイクルし
|> 続けなければならないが、その処理のあいだ
|> 膨大なプルトニウムのロスが生じること。
|> 第三に、リサイクルを順調に進めるには、完璧
|> な増殖炉を大量に必要とすること。
|> このように、現実に解決不能な数々の条件が、
|> 当初の机上計画で無視されてきたのである。
|> さらに大きな問題は、「増殖炉から発生する
|> 使用済み核燃料」を再処理する技術が日本には
|> ないことにある。この化学処理に成功しなけれ
|> ば、プルトニウム原料は得られず、増殖炉
|> リサイクルのシナリオ自体が成り立たない。