対称性とスピン


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投稿者 松本 日時 2003 年 7 月 12 日 23:29:20:

∇量子力学的スピンの概念を超対称性から説明しようと
いう試みもあるようですね。
この説明ではEPRとの関連も問題になりそうですね。

「群の発見,原田耕一郎,2001年」
[空間のシンメトリー]
 何もない闇の中では,動いたことすらわからないし,
もとの位置に戻ることさえできない。闇の中では一瞬先
もまた闇である。どちらに行っているかさっぱりわから
ない。それはとりもなおさず,真空は対称だから,どち
らに行っているかわからないし,またどちらに行っても
同じなのである。
これが,空間自体の対称性である。数学的に言えば,
「真空では原点をどこにとっても,それからどのように,
3つのx,y,z軸をとってもまったく同じである」という
シンメトリーをもっている。

 そんなあたりまえなことはわかっていると読者は言う
であろう。しかし,それがあたりまえではないことを生
み出すのである。
アインシュタインは,ガリレオの慣性律やニュートンの
運動法則は,空間が平行移動と回転に対してシンメトリー
をもっていることから帰結される運動法則であると結論
した。
そして,電磁気学から生ずるいろいろな矛盾や不可解な
ことを解明するために,物理空間,すなわち,時空間は
回転に関して対称であるだけでなく,すべてのローレンツ
変換で対称であると仮定した。
そして,物理法則はローレンツ変換で不変であるとの
仮定のもとに,特殊相対性理論が生まれたのである。

 特殊相対性理論は電磁理論を完成させたが,重力理論
ではなかった。
アインシュタインは,さらに10年の努力をし,物理空間
は,回転,平行移動,ローレンツ変換のみならず,すべ
ての一般座標変換に対してシンメトリックであるとして,
一般相対性理論を生みだしたのである。

 最近の量子場の理論では,そのような一般座標変換で
も不十分で,局所座標変換が必要になっている。座標の
変換規則が局所的にしか与えられていないのである。
一瞬先が闇ならば,大局的な変換を考えるのは,言い過
ぎだという。一瞬先のことはわからず,また少し前の
時空間がいまどのようになっているのかもわからない。
もう過ぎてしまったことなのである。
これが,時空間の局所的シンメトリーである。
そして物理法則はすべての局所シンメトリーで不変で
なければならないと仮定して,ビッグバンから宇宙の
果てまでのすべての時空間内での物理現象を包含する
理論を探しているのである。


「エレガントな宇宙,ブライアン・グリーン,2001年」
[スピンとは何か]
 電子のような素粒子は、地球が太陽のまわりで軌道
を描くのと似たような形で、原子核のまわりで軌道を
描くことができる。しかし、電子を点粒子として記述
する伝統的な理論では、地球の自転に相当するものが
ないように見える。
どんな物体が自転するときにも、回転軸上の点は−
回転するフリスビーの中心点のように−動かない。
ところが、ある物が本当に点のような物であれば、
回転軸から離れた「他の点」などない。
だから、点状の対象が回転するというのは意味をなさ
ないように見える。
だがそんな推論は、かなり前に量子力学がもたらした
いま一つの驚きの前に崩れた。

 1925年、オランダの物理学者、ジョルジ・ユーレン
ベックとサミュエル・ハウトスミットは、電子が非常
に特殊なある磁気的性質をもつと考えれば、原子が
放出・吸収する光の性質にかかわる大量の不可思議な
データが説明できることに気づいた。その100年ほど前
に、フランスのアンドレ・マリー・アンペールが磁気
が電荷の運動から生じることを証明していた。
ユーレンベックとハウトスミットはこの手がかりを
たどって、データが示唆するような磁気的性質を生み
出しうる電子の運動が一種類だけあることを見いだし
た。それが回転運動、つまりスピン(自転)だ。
こうして、ユーレンベックとハウトスミットは、古典
物理学的な予想に反して、電子は地球のように公転も
自転もすると主張した。

 ユーレンベックとハウトスミットは、電子は文字
どうり回転していると述べたのか。イエスでもあり
ノーでもある。
二人の仕事が本当に明らかにしたのは、普通のスピン
のイメージといくらか似ているが、本質的には量子
力学的なスピンの概念があるということだ。
それはミクロの世界の性質の一つで、古典的観念に
磨きをかけたものだが、実験的に立証された量子的
ひねりが注入されている。
例えば、スピンしているスケーターを考えよう。
腕を縮めると回転は速くなる。腕を伸ばすと、回転
は遅くなる。そして、いつそうなるかはどれだけ
勢いよく回転しはじめるかによるが、いずれ、回転
は遅くなり、止まってしまう。
ユーレンベックとハウトスミットが明らかにした種類
のスピンは、そうではない。
この二人の研究とそれ以後の研究によると、宇宙の
電子はすべて、つねに一定不変の速さで回転する。
何らかの理由でたまたま回転しているなじみ深い物体
のスピンとはちがって、電子のスピンは一時的な運動
状態ではない。質量や電荷のような固有の性質だ。
回転していない電子は電子ではない。

[超対称性とは何か]
 先に強調したように、スピンの概念は回転するコマ
のイメージに表面的には似ていても、量子力学にもと
づく重大な点で違っている。
1925年にこの概念が発見されたことで、純粋に古典的
な宇宙には絶対に存在しない、もう一種類の回転運動
があることが明らかになった。

 このことから、次のような疑問が湧き起こる。
ちょうど、普通の回転運動について(「物理学は空間
のあらゆる方向を対等に扱う」)回転不変性という
対称性原理が成り立つように、スピンと結びついた
もっと微妙な回転運動が、それとは別の対称性が自然
法則にありうるということを示しているのだろうか?
1971年頃までに、物理学者はこの問いの答えがイエス
であることを明らかにしていた。
全体像はかなり込み入っているいるが、要点は、スピン
を考慮すれば、数学的にありうる自然法則の対称性は
ちょうどもう一つあるということだ。
それは超対称性と呼ばれている。



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