視覚について


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投稿者 松本 日時 2000 年 8 月 31 日 00:29:28:

回答先: Re: 触覚について 投稿者 松本 日時 2000 年 8 月 29 日 23:50:57:


前回の視覚については、ファインマン物理学
(1965年)から紹介しましたが、比較的最近
の「ここまでわかった脳と心」(Susan Greenfield)
1998年にも視覚についての記述がありますので
紹介します。

 桿体の長さは、およそ150から200マイクロ
メートルである。
 色素細胞層に隣接した外節には、化学物質が埋め
込まれた円板がたくさん積み重なっている。
 この化学物質は、光のエネルギーを変換する役割
を担っている。
 反対側の内節には、核やミトコンドリアなど通常
の細胞構造がある。
 基部には介在細胞の樹状突起とのシナプスがあり、
これらの細胞を通して神経節細胞と連絡している。
 神経節細胞は脳に信号を送る細胞で、軸索が集ま
って視神経を形成している。
 網膜には視細胞のない盲点がある。
 ここは視神経繊維が束になって出て行く場所である。

 網膜にはいった光は、桿体と錐体に到達するまで
に、毛細血管や数層の神経細胞層(双極細胞、水平
細胞、神経節細胞など)を通る。
 これらの組織は透過性が高い。
 桿体と錐体の後ろには色素細胞層があり、迷い
こんだ光を吸収して、網膜への逆反射を防止して
いる。
 
 一つの桿体におよそ2000万個の円板があり、
その一つにロドプシンという光感受性をもつ色素
分子が最大で1億個ほど点在している。
 ロドプシン分子は二つの部分−オプシンという
タンパク質と、光を吸収するレチナールという物質
−からなっている。
 レチナールはビタミンAの誘導体で、いくつかの
異性体がある。
 光に当たる前は11−シス型レチナールという形
になっている。この11−シス型レチナールに光の
エネルギー粒子(フォトン)が当たると、一方の端
がねじれて、もう一つの異性体であるオールトランス
型レチナールになる。
 この変化に伴ってオプシンの立体構造も変化して、
ロドプシン分子全体がメタロドプシンUという物質に
転化する。
 ここまでの過程は1000分の1秒で終わる。
 この過程で光が果たす役割は、レチナールにエネ
ルギーを加えて形態を変化させることだけである。

 ロドプシンからメタロドプシンUへの転化が引き
金となって、桿体の中に化学連鎖反応が起こる。
 まずそれぞれのメタロドプシンU分子が、数百個
のトランスデューシンというタンパク質を活性化
する。活性化されたトランスデューシンがホスホジエ
ステラーゼという酵素を活性化する。この酵素がサイク
リックGMPという、網膜の細胞を刺激する神経伝達
物質の構造を変える。
 すると桿体の中のcGMP濃度が下がる。
 cGMPの濃度は暗いときに高い。
 桿体内のcGMP濃度が下がると、膜のナトリウム
チャンネルが閉じて、ナトリウムイオンを通さなく
なる。cGMPは桿体外節の細胞膜にあるチャンネル
を開けておく作用をしているからだ。
 従って網膜に光が来ないときは、チャンネルが開い
てプラスに帯電してナトリウムイオンを細胞内に入れ
る(これを暗電流という)。これはプラスのカリウム
イオンが細胞外に出て、細胞内をややマイナスにする
動きと平行関係にある。
 桿体に光があたると、ナトリウムイオンの流入は
減少するが、カリウムイオンの流出はそのまま続く。
 従って細胞内の電位はますますマイナスになる。
 すなわち過分極する。

 桿体に過分極が起こると、シナプス末端から放出
される神経伝達物質の量が減少する。その結果、脳に
信号が送られる。使われた科学物質は再利用される−
オールトランス型レチナールは11−シス型レチナ
ールに戻り、ナトリウムチャンネルは再び開く。
 これらすべての過程が、フォトンが桿体に届いて
から5分の1秒以内に起こる。
 錐体でもこれと似た過程を生じるが、同程度の
活性化を起こすためには、桿体の約50倍の光を
必要とする。錐体は明るい場所で最大の働きを
するのだ。
 





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